路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

路線バスの新規参入問題。コミュニティバスも例外ではありません。

岡山県の両備グループが、路線バスの新規参入に伴い赤字路線を一気に廃止するニュースが話題となっていますので、今日はこのネタについて色々書いてみようと思います。

両備グループは8日、岡山県内で運行している路線バスのうち31路線の廃止届を国土交通省中国運輸局に提出したと発表した。いずれも乗客が少ない赤字路線。廃止届の背景には、路線バス全体の収支を支えている別の黒字路線に格安業者参入の動きがあり、これをけん制する狙いがある。(2018年2月9日 毎日新聞)

どういうこと?

と、思われた方のために、まずは、東京と新大阪を結ぶ東海道新幹線を例にざっくり解説してみましょう。

まず、東京~新大阪の正規運賃は14,450円で、JR東海のドル箱路線として知られています。

実際、JR東海の旅客収入の約9割が新幹線収入を言われており、この収入があるから赤字路線も維持できていると言う側面もあるわけです。

では、ここにJR東海以外の会社が「うちも東京~新大阪間に線路を敷いて、新幹線を走らせよう! 運賃は半額の7,000円で!」となったらどうでしょう。

まぁ、現実的ではありませんが、そうなったら「客の奪い合い→JR東海は収入減少→赤字路線を廃止→会社の利益を確保する」と言うのが一般的なセオリーですよね。

そして、この例で言うJR東海の立場が両備グループと言うわけで、両備グループのドル箱路線に、別会社が新規参入を申請したために、両備グループが先手で赤字路線の廃止を表明したわけです。

ポイントは「廃止します」と先手を打ったこと!

通常、「新規参入した結果、既存路線の利益が減少したので赤字路線を廃止します」と言うのが一般的なのですが、今回は「新規参入されると利益が減少するので、赤字路線を廃止します!」と新規参入が決定する前に両備グループが廃止を明言した点にあると言えます。

各メディアでも書かれていますが、交通政策に対する”けん制”と言うわけですね。

正直、この行動は一運転士としては大賛成です。

もし、このまま赤字路線を維持したまま新規参入がはじまれば、間違いなく利益は減少して運転士の生活も脅かされるでしょう。具体的にはバスの稼働台数を抑える(人件費カット)ため、運転士一人あたりの行路数の増加や、勤務時間の延長も想定されます。

当然、賃上げもままならないでしょうし、過酷な勤務から離職も加速するでしょう。

そのような負のスパイラルが目に見えたからこそ、今回の行動は運転士としては理解できるわけです。

ただ「廃止により運転士余りが生じて仕事量が減る」「他の営業所への転勤を余儀なくされる」と言う部分もあるかもしれませんので、当事者である運転士の感覚は異なるかもしれません。

コミュニティバスでも新規参入問題が!?

さて、今回は自社路線に対する新規参入でしたが、同じようなことがコミュニティバスでも生じています。

それが金額の安い事業者と契約する「入札」や、金額に加え応札者の提案を促す「プロポーザル」と呼ばれる入札方法です。

平成28年の国交省の資料によると、コミュティバスにおける入札は157件、プロポーザルは116件、一者との随意契約は254件となっており、コミュニティバスの約半数が入札やプロポーザルの契約。その契約年数も2年程度の短期間であるため『コミュニティバスの運転士に関しては安定性がない』ことを私は問題視しています。

例えば、某コミュニティバスの運転士を契約社員で雇用していた場合、入札やプロポーザルで他の事業者に契約を奪われれば、大きい事業者なら配置転換も可能でしょうが、零細企業ともなれば「はい。契約終了です!」と容赦なく切り捨てられることもあり得るわけです。

もし、路線バス運転士を希望していた方が、このような現状を知っていたら応募しますか?

正直、若い方が応募するとは思えませんよね。

バス運転士不足が叫ばれる中、こう言った要素も少なからず影響していることを理解してほしいものです。

悲惨な事故の教訓はどこに・・・

今回の両備グループの件は『路線バスの置かれた環境の問題提起』として良いきっかけになったと思います。

しかし、規制緩和の過当競争に端を発した『関越道の事故』や『軽井沢の事故』の教訓が全く生かされていないことに憤りを感じるのも事実です。

あのときは「教育の基準」や「運行管理者の資格要件(貸切)」が見直されましたが、結局、参入そのものに対して規制するのではなく、路線バスに至っては放置の状態です。

両備グループの件も新規参入に関して運輸局は認める方向であると報道されていますし、赤字路線の廃止についても運輸局は「事業者の経営ことは・・・」と逃げています。

結局、置き去りにされるのは利用者なので、「利用者のための規制緩和」と言うならば、そのあり方について法整備も含めて再検討する必要があると思いますが「まぁ、また悲惨な事故がない限り、重い腰は上がらないだろう」と諦めている今日この頃です。

ちなみに、今回の問題。

着地点の見通しは「新規参入(認可)→両備グループは赤字路線を廃止→廃止路線はコミュニティバスに置き換え→自治体の負担が増」と予想しています。

さらに、そのコミュニティバスを両備グループが受託することになれば、当該路線に乗務していた運転士の仕事は確保されると言った感じではないでしょうか?

何にしても、国政策で振り回されるバス業界の将来は暗いですね。

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