路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

路線バスにミュージックホーンが付けられない理由と、クラクションに変わる車外注意喚起放送「よびかけ君」の話

路線バスは車両が通れる限り申請すればどこでも走ることができます。

最近はその柔軟性を生かして住宅街の奥地や、公共施設の玄関先など幹線道路から離れた場所まで乗り入れる路線も多くあります。乗客にとってはいいのかもしれませんが、玄関先まで乗り入れるとなると事故リスクが高く、遅延の原因にもなるので不謹慎ながら運転士としては面倒に感じるのが正直なところです。

実際、公共施設の玄関前がバス停だと、駐車場からの歩行者や玄関から出てきた人がバスの目の前を横切ることも多々ありますので気を使います。他にも商店街を走るとなるとバスの接近に気が使かない歩行者や自転車も多いので横を通過するときは本当に気を使います。

こういう時、乗用車やトラックだとエンジンが前にあるのでエンジン音で相手も気が付くのですが、路線バスはエンジンが後方についているのでなかなか気が付いてもらえません。このあたりはプリウスなどのハイブリッド車に乗っているドライバーも同じ悩みを持っているかもしれませんね。

さて、このように車の存在を歩行者や自転車に知らせたいとき、みなさんならどうしますか? 

「クラクションを使う!」と答えた方は道路交通法違反(警音器使用制限違反)になりますのでダメですよ。もっとも、クラクショントラブルの原因になりかねませんので注意が必要です。

ちなみに私の場合、歩行者や自転車の横を通過するときは、ブレーキを軽く踏んで「プシュ~」と空気圧を出して相手に知らせるようにしています。もちろん、距離を取るか徐行で通過することが前提ですが最近はイヤホンを付けて走行している自転車も多いので、一瞬の空気圧音では気が付いてもらえないことも…

そんな運転士をサポートするアイテムが「よびかけ君」と言われる車外注意放送システムです。

車外注意放送で一般的に知られているのが、「ピピピ♪ 左に寄ります!」という左折注意放送と、「ピピピ♪ バックします!」という後退注意放送で、バスに限らずトラックにも装備されています。

これに「ピンポン♪ バスにご注意ください!」という放送を加えたものが車外注意放送システム「よびかけ君」で運転士の手元スイッチ操作で起動するシステムです。

電車のようにミュージックホーンじゃダメなの?

路線バスにミュージックホーンが付けられない理由と、クラクションに変わる車外注意喚起放送「よびかけ君」の話

最近は電車の警笛も一般的に知られている空気圧を利用した空笛の他、優しい音でボリュームに配慮した電子ホーン、音楽を奏でるミュージックホーンも普及しています。

ですから、「路線バスも電車のように電子ホーンやミュージックホーンを装備すれば良いのでは?」と思われた方もいるかもしれません。実際、「乗用車に歩行者向けの電子ホーンを付けてはいけないの?」と思った方も多いかもしれません。

しかし、路線バスに限らず車にはミュージックホーンを警音器として取り付けることができないのです。

これは車両の保安基準と呼ばれる規定が影響しています。余談ですが、路線バスで運転席にシートベルトがあって客席に無いのも保安基準による規定が背景にあるそうです。

この保安基準を要約すると、警音器は「連続音であること」「大きな音であること」「警音器と紛らわしいものを備えてはならない」との規定が明記されているので、ミュージックホーンや歩行者向けの警音器(ボリュームを抑えた電子ホーン)はダメということになります。

その一方、右左折や後退時に注意を喚起するものについては許可されていますので、今回の注意喚起放送システム「よびかけ君」は問題ないそうです。このあたりはメーカーと国交省の確認や調整もあったのでしょうね。

なかなか普及が進んでいない?

個人的には歩行者や自転車に注意を呼びかける「よびかけ君」は非常に意味のあるシステムだと思っています。しかし、肌感覚としてはなかなか導入が進んでいないように感じます。

東海地方では名鉄バスが全車導入しているそうですが、それ以外の社局ではあまり聞かれないのが実情です。

恐らく、コストと必要性の問題だとは思いますが、冒頭にも書いたように路線バスは幹線道路だけではなく路地や公共施設と言った危険個所に乗り入れるようになり、歩行者や自転車もスマホ操作やイヤホンをして注意が疎かになっている環境ですので、時代にあわせて保安放置も広く普及させてほしいと思います。

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