路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

臨機応変と基本動作に挟まれて…

限られた区間内ならどこでも乗降できる”フリー乗降区間”や、降車するバス停を乗車時に申告して運賃を前払いするケースなどを除き、一般的な路線バスでは「このバス停で降りるから止まってね」のように乗客から降車するバス停のリクエストを受けることはしません。

“降りるときは降車ボタンを押す”のが一般的なスタイルです。

とは言っても、冒頭のように「ここ(バス停)までよろしく!」とタクシーのような感じで乗車される方も高齢者を中心に多く見えます。個人的には「かしこまりました。」と返答したいところなのですが、営業所からは「降車ボタンを押してもらうのが基本、事前に伺わない」との指示がでているため、「すみません。一応、降車ボタン押してくださいね。」と優しく返答します。

こういった扱いについては事業者や運行スタイルによって方針が異なりますので一概に言えませんが、恐らく多くの方は「そんなの、臨機応変でいいじゃん!」と思われるかもしれません。

しかし、以前から書いている通り不特定多数が乗車する”公共交通”であるがゆえに良かれと思った行動が逆にクレームになることもあります。

つまり、「あの運転士さんは対応してくれたなのに、今日の運転士はダメだった!」とサービスの不均衡を指摘してくるわけです。正直、運転士の接客態度が悪いならともかく、イレギュラーなことを要望して受け入れられないことに対するクレームはどうかと思いますが、こういったことも現実にあります。

このような背景もあり「降車ボタンを押してもらうのが基本、事前に伺わない」との指示が出ていると思います。

そんな中、とある終車に乗車した一人の高齢者。

出発して間もなくミラー越しに見るとすっかり寝込んでいる様子が見て取れました。それ以降も、バス停でドアを開けるとパッと起きるのですが、またすぐに寝込んでしまいます。こういう時に怖いのが”乗り過ごし”ですね。

乗客はたった数人。

「お客様、どちらまで乗車されますか?」と声を掛けようか悩んだのですが、営業所の指示と他の乗客の視線もあり声を掛けることができません。

完全に自分の善意と基本動作に挟まれてしまいました。

そして、悩んだまま終点に到着。

パッと起きたその乗客が「反対って何時がある?」と聞いてきます。

「はい、今なら○○発の終車がありますよ」と返答しましたが、内心「やっぱり寝過ごしたかぁ」と言った感じです。

この件を聞くと、「声を掛ければよかったのに…」との意見も出るでしょうが、同時に「バスは基本通りに運行している。乗り過ごした乗客が悪い」とドライな見方もできるでしょう。

このような臨機応変と基本動作の間に挟まれることはよくあります。

例えば、ドアを閉めて車が動き出した瞬間に乗り遅れを発見した場合もそうですね。そのまま出発するのが基本ですが、やはり”善意”から再度止まる運転士もなかにはいます。

こういったイレギュラーな対応を「親切」と感じるか、「基本動作ができていない」と感じるかは人それぞれですが、ひとつだけ理解していただきたいのは「何かあったときの責任は運転士に来る」と言う点です。

例えば「乗り遅れを発見して再開閉した時にドア挟みでケガをした」「再開閉時に自転車と乗客が接触した」と言う感じで何か事故があれば「なぜ、ドアを開けたのか?」と叱責されるのは運転士です。最悪、行政処分や刑事処分を問われる可能性もゼロではありません。

同じようなケースは鉄道にも言えることなのですが、イレギュラーなことをするとき運転士は何らかのリスクを背負って対応しているのは理解していただきたいですね。

そうは言っても、今回の乗り過ごしは「たった数人の終車なんだから、杓子定規に考えず声を掛けてもよかったのでは?」と後から思った次第です。

単にサービス業出身だからそういう目線になったのかもしれませんが…

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