23Dec
振り替えれば今年(2017年)もあっという間でしたね。
さて、先日twitterで・・・
最近、ウチの営業所で離職が加速。運転士不足のごのご時世、ちょっとでも待遇が良いところに運転士が流れていく『売り手(運転士)市場』ってことを経営者が理解しているのか疑問を感じる今日この頃です。退職理由は様々ですが、再就職先はほとんど同業他社だったりします。
— 路線バス運転士@愛知 (@rosenbusnet) 2017年12月18日
とツイートしたところ大きな反響がありましたので少し掘り下げていこうと思います。
まず、根本的な部分としてはバス業界は慢性的な人員不足であると言う点ですが、改めてこの部分を4年前(平成25年)の12月に国交省より発表された「バスの運転者を巡る現状について」からの資料で確認しておきます。
『年収』は全産業男子平均が530万円に対して、民間のバス運転士は446万円、公営は654万円。
『年齢』は全産業男子平均42歳に対して、バス運転士は48歳。
『労働時間』については、全産業平均が年間2184時間に対して、バス運転士は2544時間。
とまぁ、事業者ごとに差はあるものの、民間のバス運転士の労働環境は決して良いとは言えません。
さらに、資料では見えてこない、朝・夜だけ勤務して昼間は休憩(その分、夜間の休息期間が短い)となる『中休勤務』や、法令で認められている『16時間拘束の勤務』などもありますから”なり手”が少ないのもうなずけます。
また、車内での転倒事故(車内事故)、一般車からの嫌がらせ(急な割り込みや煽り)、一般人から運転に対する通報や乗客からのクレーム、さらに人命に関わる交通事故のリスクを孕んでいますからから「こんな給料でハイリスクな仕事やってられるかぁ!」と思いたくなることも多々あります。
その一方、自分が運転しているバスが何事も無く一日を終え帰庫すれば「業務終了!」ですから、営業マンのように休日に顧客からの電話に振り回されることもありませんし、「プレゼン用の資料が完成しないから自宅でやるかぁ」のように仕事を自宅に持ち帰る必要もありません。
正直、このあたりは個人の価値観による部分が大きいですから何とも言えませんが、少なくても営業職出身の私から言わせると公私がハッキリしている運転士という仕事は前職より精神的な負担が少なく、自分に合っているような気がします。
バス業界は慢性的な人員不足
さて、ここからが本題となりますが、現在のバス業界は慢性的な人員不足です。
実際、2017年10月度の有効求人倍率(自動車運転職)は2.84倍と、仕事を探している人(1人)に対して2.84社分の求人があるわけです。ここでの自動車運転職とはバスだけではなく、タクシーやトラックも含まれていますが、現役のバス運転士は大型二種免許を持っていますから、その気があればタクシーにもトラックにも転職することが可能です。
無論、トラックと言ってもフォークリフト・ちゃぶり(手積み、手卸し)など運転だけではありませんし、業界ならではの事情があるでしょうから転職が容易とは言いません。しかし、ポジティブに考えれば今の職場が嫌で辞めることにしても、自動車運転職に限って言えば”転職先の候補”がそれなりにあるわけです。
さらに、関越道や軽井沢の事故に伴う規制強化でニーズが増加している運行管理者の国家資格を取得すればさらに門戸は広がるでしょう。
つまり、今のバス業界は自分を企業に売り込む運転士優位の売り手市場なわけです。(事業者としては「運転士が欲しい」わけですからね)
逆に、買い手(事業者)市場なのは公営バスです。最近は風当たりが強い公営バスの運転士ですが、官民格差が騒がれてもやっぱり公務員は魅力がありますので「民間バスで経験を積んで公営バスに転職」というのは今でもある話しです。
あと、大手鉄道系も応募者が集まりますので買い手市場の傾向はあるのですが、最近は徐々に売り手市場に変わりつつあるようです。
そうなると、今勤めているバス会社より給料や社風など魅力的なバス会社があれば「転職しようかなぁ」となるのが自然な流れで、それが影響してなのかは不明ですが私の営業所でもここ最近「離職」が加速しています。理由は様々ですが、少なくても辞めた方の再就職先のほとんどは同業他社だったりするのが実情です。
そして、退職者に伴う”穴”を埋めるために、他の運転士や内勤者が休日出勤や長時間労働を強いられ、経験ままならない新人運転士が早々に実践登用され、更なる退職者を誘発する負のスパイラルに陥りかけています。
「今日もあたりまえのように休日出勤し、点呼場を見渡すと内勤者もハンドルを握り人がいない・・・」
そんな光景が繰り広げられている私の営業所ですが上層部の方に一言言いたいですね。
『本当に現場のこと、わかっていますか?』
早朝寝不足で出勤したとき・・・、寒い早朝バスを点検しているとき・・・、夜車内清掃をしているとき・・・、運転士がため息交じりで仕事をしているとき、経営に携わっている上層部の方を現場で目にしたことは全くと言っていいほどありません。
その都度、映画『踊る大捜査線』で青島俊作が発した「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きてるんだ!」と言う皮肉たっぷりのセリフを思い出すわけですが、このご時世、重大事故でも起こったら、経営存続の危機に直面するのがバス業界です。
先ほども書きましたが、運転士は免許があれば転職先はそれなりにあるわけですが、慣れた職場が一番いいものですし生活もあります。
そのあたり「上層部はわかってるのかなぁ」なんて思いますね。
ただ、保有車両30両以上の事業者における「経常収支率」の平均が94%(100%を上回れば健全なので、大多数の事業者は経営環境が厳しい)であることを考えると金銭的な対策は難しいのでしょうが、『ES(従業員満足)なくして、CS(顧客満足)なし』と言う言葉もありますので、現場に足を運び声を吸い上げ、労働環境・業界情勢・経営状況をしっかり見極めて対応して欲しいものです。
最後に、みなさんの周囲に年中運転士を募集しているバス会社ありませんか?
それが、「運転士を募集しても来ない」「入社してもすぐ辞める」と言う厳しい労働環境の証左だと思いますが如何でしょう。