28May
乗用車ではオートマチック車(AT車)がほとんどですが、路線バスではまだまだマニュアル車(MT車)が主体です。
実際、私の営業所のバスもほとんどがMT車でAT車はごく少数です。
さて、路線バスで徐々に普及しているAT車。乗用車を運転する感覚だと「AT車の方が運転しやすいから好き」と言う方が多いと思うのですが、意外にも運転士の反応は真っ二つです。
AT車はクラッチ操作がないので加速するときは楽なのですが、重量が大きいので変速時にどうしても独特のショックが生まれます。
これが顕著に表れるのが止まるときで、運転士の反応が真っ二つにわかれる最大の理由でもあります。
例えば、MT車で時速50km(5速)からバス停に止めるとき、一般的には排気ブレーキとフットブレーキで減速し、最後はクラッチを踏んでフットブレーキだけで停止位置を微調整します。
このとき、ギアは5速のままですからエンジンブレーキの減速力もほぼ一定です。
なので、「ちょっと、ブレーキが強いかな」「ぴったり止めれそうだ」と予想することができます。
まぁ、『電車でGO』ほど繊細なブレーキ操作ではないのでちょっとオーバーな表現かもしれませんが、止まる寸前で再びブレーキを踏み込むと転倒事故のリスクが飛躍的に上がりますし、乗客の目もありますから一応考えながら運転しています。
余談ですが、指導者の中には「5速→4速→3速とシフトダウンである程度減速して、最後はフットブレーキを使う」と指導する方もいるのですが、観光バスならともかく、ストップアンドゴーが多い路線バスではシフトダウンで減速する人はほとんどいないですね。
もちろん、ブレーキの過熱によるフェード現象を予防するには有効な運転方法ですので知っておく必要はあるのですが…
話を本題に戻し、これがAT車だと状況が変わります。
AT車だと、減速するにつれて「5速→4速→3速→2速→1速」と律儀にシフトダウンをしてくれます。
そのため、シフトダウン時のショックが加わるとともに、エンジンブレーキの力も一定しませんので、「あれっ、失速しちゃう」とブレーキペダルを緩めたり、思ったタイミングでシフトダウンしないので「おっ、行き過ぎちゃう」とブレーキを踏み込むこともしばしば。
特に、止まる寸前に2速から1速にシフトダウンするのですが、どの車種もこのショックがなかなか大きいので気を遣います。
このように、MT車よりAT車のほうが、停止位置を狙って止めることが難しく繊細なブレーキ操作が求められるので、運転士の評判は真っ二つなんですね。
まぁ、こんな気遣いを乗客に感じさせずぴったりとバスを止めるのが『プロの技』なのでしょうが…