路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

西鉄で連節バスが導入されますが、けん引二種免許はいるの?

福岡市(西鉄)で連節バスが新たに運行されることが発表されましたね。

現在、連節バスを運行しているのは、京成バス・神奈川中央交通・岐阜乗合自動車・いわさきバスネットワーク・神姫バス・JRバス関東の6社ですから、今回の福岡市の投入で7例目となります。

一般の路線バスの収容人数が75名前後なのに対して、連節バスの収容人数は110~130名(車種により異なる)と倍近く収容することが可能ですから乗せこぼし対策や郵送力増大に寄与しそうです。

実際、私も大型バスで走行する路線を運用変更で中型バスで運行した時は車内はパンパンだったのを経験していますので「大は小を兼ねる」のありがたさを痛感しています。特に車内が混雑すればするほど乗降に時間がかかるのでバスは遅れる一方です。しかし、大型バスで空間に余力があればスムーズな乗降ができますから遅延防止に貢献してくれるわけです。

連節バスを導入するためのハードル

福岡連節バスのイメージ
(福岡で導入される連節バスイメージ 出典:J-CAST)

このように連節バスの導入はメリットが多いような気がしますが、実は導入までのハードルは高いのです。

まず、連節バスを走らせるためには道路交通法や道路の規格が連節バスに適応していないため警察や自治体との協議が必要不可欠となります。実際、連節バスの経路や車線は細かく決められているそうで、通常のバスだと「この先、通行止めになりましたので迂回運転します」と管理者の指示で臨機応変に対応できるのですが、連節バスの場合は非常時の迂回ルートも前もって検証し許可をもらわなければいけないのだそうです。

そして、最大の難関が購入費です。

一般的な大型バスの購入価格は3000万円前後に対して、連節バスの購入価格は約1億円と言われています。さらに整備工場も必要となりますが、岐阜バスの場合、その費用に1億円を要したそうです。さらに、連節バスが走れるように道路を整備しなければいけないため、導入には高額な初期投資が必要となりますが、これら費用の一部には「税金(補助金)」が充てられるわけです。

そのため、地元住民への説明が必要不可欠なのですが、これを疎かにすると新潟市のように導入を検討しながら市民の説明不足によって計画が遅れる結果を招いてしまいます。運転士的には「投資費用があるなら福利厚生(給料)などに回せ!」という声も聞こえそうな気がしますが…

さて、一番懸念されるのは降車時間です。運賃後払いの場合、普通のバスと同じように一人ずつ運賃箱で対応していくことになります。ICカードが普及したと言っても、大型バスの倍近い乗客が出口に殺到したとなると降車時間を要するのは疑いもありません。

さらに、非常時も含めて運転士が対応する乗客数が倍近く増えることによる負担増が懸念されます。この解決策としては、広電の路面電車のように後部扉(入口)に車掌を配置して降車できるようにすることが考えられますが、人員不足と財政難が叫ばれるバス業界でそれだけの要因を用意することが可能かどうか疑問が残ります。

あとは運行ダイヤです。連節バスのメリットの一つに大勢の人を一度に乗せて走ることができるという点があります。そのため、10分に1本運転されていた路線が、連節バス導入によって20分に1本の運転(間引きによる減便)になる可能性は否めません。

運行する側では合理的な計画だとは思うのですが、乗客は20分に1本の連節バスと、10分に1本の大型バスとどちらを求めるでしょうか? それが乗客離れを誘発しないか心配されます。

現状を打開するには違いないが…

懸念材料はあるものの、連節バスは大型二種免許(*)で運転できるため、海外で普及している信用乗車制度や一般道における連節バスの優先権など運転士を取り巻く環境が整備されていけば、今注目されているLRT(次世代型路面電車システム)と並んで路線バス普及の起爆剤になるかもしれません。

*連節バスはトレーラーのように分割できないため「けん引二種免許」はいりません。しかし、特性がトレーラーに似ていることから社内ルールで免許を取得させる事業者が多いようです。

実際、岐阜市(岐阜バス)のように連節バス導入によって観光資源にも貢献し「乗客が4倍も増えた」という明るいニュースもありますので、行政と事業者の手腕に期待したいところです。

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