路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

「もらい事故で賠償責任」これが既定となれば職業ドライバーは損なだけです

交通事故のイメージ

おはようございます。今日は遅番シフトなのですが愛知県は雨模様ですので夜間運転は最悪となりそうです。

さて、昨夜ツイートしたのですが、もらい事故の賠償に関して非常に憤りを感じる判決がありましたので、今回はその判決と今後について考えてみようと思います。まず、記事を書く前に今回の事故で被害に会われた方にはお見舞い申し上げます。

▼以下引用

車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが13日、福井地裁であった。原島麻由裁判官は「対向車側に過失がないともあるとも認められない」とした上で、無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4千万円余りの損害賠償を命じた。

(出典:福井新聞 2015.4.19)

という内容です。

今回、センターラインをはみ出した車の任意保険は”運転者家族限定”だったそうですが、運転していたのが家族以外であったことから、保険金が支払われなかったケースのようです。

結果、今回の判決が確定すれば4千万円余りの損害賠償金が支払われることになるので、センターラインをはみ出した側が”救済”されることとなるのですが、判決の問題点はもらい事故側の無過失が証明できないから賠償金を支払わせると言う点ではないでしょうか?

▼以下引用

判決では「対向車の運転手が、どの時点でセンターラインを越えた車を発見できたか認定できず、過失があったと認められない」とした一方、「仮に早い段階で相手の車の動向を発見していれば、クラクションを鳴らすなどでき、前方不注視の過失がなかったはいえない」と、過失が全くないとの証明ができないとした。

(出典:福井新聞 2015.4.19)

しかし、日本の道路交通は「車は左側通行(キープレフト)」が大原則となっています。わかる範囲で調べたところこのような正面衝突事故の場合、緊急車両など特殊なケースを除いて過失割合は10:0でセンターラインをはみ出した車の過失とされてきたそうです。

確かに、教習所では「正面衝突の危険があるときはクラクションを鳴らすなど回避しよう」と習った記憶がありますが、「赤信号は止まれ」と同じく車の左側通行は日本では当たり前のことですから、回避努力があったとしても過失割合は当然だと思います。

今回の判決は「無過失が証明されなければ賠償責任がある」とされた自賠法には根拠が見出せるかもしれませんが、その根拠を正当化するために「自分に過失が無いことを証明せよ」という無理難題を示したものだと個人的には思っています。極論ですが、もし何らかの事件で裁判となったとき、「無実であることを証明せよ」と言っていることと同じように感じますね。

このような判断が道路交通でまかり通れば、一日中運転しているバス・タクシー・トラックドライバーはリスクが高いだけで「やってられない」と言うのが正直なところでしょう。

あと、一部では「任意保険が適応されないことへの救済措置では?」との意見もあるようです。確かに「救済されなければ余りにも…」と同情できるのですが、そのためにもらい事故を受けた側がスケープゴート(身代わり)に仕立てられた側面も否めません。実際、センターラインをはみ出した原因が居眠り運転だったと報道されていますので、クラクションを鳴らしたところで事故を回避できたか疑問が残ります。その点、裁判官はどのように考えていたのでしょう?

正直、今回の件は「保険金の話だから…」とドライな見方もできるのですが、例え保険金が支払われたとしても「誰にどれほどの責任にあったか?」という点は事故当事者につきまとう問題であり慰めでもあると思いますから、控訴・上告となればその判断を注視していこうと思います。

最後に、この判決を機に保険会社ではドライブレコーダー装着有無が特約に加わるかもしれません。ドライブレコーダーはイザと言う時の証拠能力を有しますし、ドライバー自身の無謀運転抑止にもつながりますので、今回の判決に関わりなく装着率が高まれば交通事故防止に貢献するかもしれません。

私もバス運転中にセンターラインを猛スピードで割ってきた乗用車と衝突しそうになった経験があります。このときはブレーキと相手側の回避で事故は避けれましたが、もらい事故だけは注意してもどうにもなりませんので、いまできることはドライブレコーダーの装着や緊急時のアイテムを整備することしかないのかもしれません。

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