16Jan
今朝の朝刊は長野県で発生したスキーバスの転落事故が大きく掲載されており、写真や記事を通じて事故の大きさを改めて痛感しました。
休憩室ではこの話題で持ちきりだったのですが、報道されている「健康診断をしていない」「出発前の点呼をしていない」「日報は既に運行が終えたことを前提に処理されていた」などと言った杜撰(ずさん)な管理体制より、「いくら運転歴10年以上とは言っても12mの経験がほとんどない状態で峠を走るのは…」「年齢的に深夜勤務は厳しいのでは…」と言った声が多く聞かれました。
と、同時に安全運転を常に意識しているつもりですが、「一歩誤れば多くの人命が危険に晒されるリスクがある仕事」と言うことを再認識させられた感じで、会話はいつも以上に重い空気が漂っていました。
運転士の高齢化
さて、昨日は運行の管理体制を糾弾した記事を書いたのですが、今日は現在のバス業界を取り巻く事情について書いてみようと思います。
まず、事故車両を運転していたのは65歳の運転士で、交代要員として乗務されていた方は57歳の運転士と言うニュースを聞いて「年齢的にどうなの?」 また、運転士13名のバス会社と聞いて「零細企業って管理が甘いの?」と思われた方も多いかもしれません。
実は、運転士の高齢化こそがバス業界の厳しい現状を物語っていると思います。
公営バス(公務員)であれば多少話は変わりますが、民間バスの多くは「求人を出しても人が集まらない→人が集まっても厳しい現状に辞めてしまう→辞めた人の仕事が残った人に回される→激務になり辞めてしまう→…」と言う負のスパイラルを繰り返しています。
結果、これまで60歳が定年だったものが65歳に延長され、さらに定年後の再雇用によってなんとか運転士を確保している事業者が多いのが実情です。
特に中小企業、零細企業と事業規模が小さくなるほど厳しい運営が強いられる印象を受けます。
日本では「熟練の技」と呼ばれる言葉があります。
しかし、運転士は残念なことに経験年数に比例して病気に襲われるリスクは高くなり、反比例して動体視力・反射能力などと言った運転をする上で大切な身体能力が低下していく現実があります。
もちろん「若いから大丈夫」と言う話でもありませんので、高齢と言われる世代の方で今もなお第一線で活躍されている方には失礼かもしれませんが、正直、このようなことからバス運転士が高齢だと”怖い”と感じる利用者も中にはいるように思います。
人が集まらない理由
では、なぜ若い人が集まらないのでしょう?
これも以前からブログに書いていますが「待遇が悪い」この一言に尽きると思います。
バス運転士に限らず、どんな仕事にも辛い業務・理不尽な待遇・日々のストレスは存在します。私がウェディングプランナーをしていたときも、休みにも関わらず会社から電話が入ったり、打ち合わせに会社に出社したりするなど辛い部分もありましたが、その分、営業成績はお金で還元されたので慰めになりました。
お金と言うとドライに聞こえますが、結局、やっていることとその対価が釣り合わなければ離職原因になってしまいます。
もちろん、人によって仕事の価値観は異なりますのでこれは私の個人意見ですが、バス運転士に関しては規制緩和による新規参入・デフレ・過当競争の影響をモロに受けて運転士の待遇にしわ寄せがいっているのが実情です。
これに事故を取り巻くリスクや長時間勤務などの要素が加われば成り手はいないですよね。
こういったしわ寄せが原因とも言われた「関越自動車道高速バス居眠り運転事故」を受けて、2014年4月から貸切バスの運賃制度が変わり実質値上げとなりました。これによって表面上は価格競争に歯止めが掛かった感じですが、まだまだ賃上げ分が運転士に還元されるのは遠いような感じです。
まだ、事故の原因がわからないので何とも言えない部分がありますが、仮に「居眠り運転」「体調の急変」など運転士に起因する事故であったとき、こういった背景について改めて議論する必要があるかもしれません。