21Jan
最近は長野で発生したスキーバスの転落事故について色々書いていたのですが、今朝の中日新聞には国道の監視カメラが捉えた画像が掲載されていました。
カメラが捉えた画像は事故現場から250m手前のものなのですが、ほんの数秒後に15名が亡くなる大きな事故が発生したと思うと、なんとも複雑な気持ちになったのが正直なところです。
報道にしてもこのブログにしても厳しい業界背景などを書いていますが、その裏には「多くの尊い命が失われた」と言う事実があるわけなので、その点だけは忘れてはいけないと思います。
ブレーキ故障説?
さて、休憩室ではこの新聞をもとに今日も他の運転士と色々話したのですが、画像を見る限り”ストップランプ”が点いているように感じます。ブレーキを踏んだ時に点灯するストップランプが点灯していると言うことはブレーキペダルを踏んでいたと思われるのですが「ブレーキを踏んでいるのに高速のまま250m(カメラから事故現場まで)も進むか?」と言う疑問を皆抱いていました。
(もちろん、異常なスピードや片輪走行などによってブレーキを踏んでも効果が弱いと言う点はあるのですが…)
また、車種によってはブレーキペダルを踏まず、排気ブレーキの動作でストップランプが点灯するものもありますので、このあたりは何とも言えませんが、もしかしたら「ブレーキ系統や制御系統が故障していた」と言うことも考えられるかもしれません。
正直、私は専門家でも整備士でもありませんので何とも言えませんが、この事業者は法令に基づく3か月ごとの定期点検の記録が確認できない車両があった*1と言われていますので経年劣化などによる車両不具合の可能性も否定できません。
ちなみに峠道だとフットブレーキを多用したことによる「フェード現象(過熱によりブレーキが効かなくなる)」を思い浮かべますが、頂上部分を過ぎ下り坂になって間もない場所での事故ですからフェード現象は考えにくいと思います。
でも、仮にブレーキ故障だったとしても「シフトダウン・排気ブレーキ」「ガードレールに車体をこする」「パーキングブレーキを使う」など非常手段はあったと思うのですが、大型に不慣れな運転士だとそれどころではなかったかもしれません。
と、書いている私もブレーキが効かなくなったときにこういった措置がとっさにできるかは疑問が残るのですが、対応できるように坂道を下るときは「もし、ブレーキが効かなくなったら…」と言うことを頭の中でシュミレーションしています。
そう考えると、原因に関わらず教育や点検整備を疎かにしていた事業者側の責任は大きいと言えるでしょうが、バス車両について言えば経年劣化が目立っているのも事実です。
経営環境(財政力)がある程度あれば新型車両を導入できるのでしょうが、厳しい経営環境を迫られているバス事業者は中古や長期使用でコストを抑えている側面もあるでしょう。
最近は運転士を取り巻く環境について話題にしてきましたが、バス車両そのものにも着目しないといけないのかもしれません。
【出典】
*1 毎日新聞 2016年1月19日