路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

運行を記録する「タコグラフ」「デジタコ」の意味と見方を解説

運転中の様子を記録する「ドライブレコーダー(ドラレコ)」はご存知の方も多いと思うのですが、バスには運行中の様子を記録するもうひとつの装置がありますので、今日はその記録装置を紹介しましょう。

その記録装置とは運転士のあいだで「タコ」と呼ばれている「タコグラフ」のことです。もちろん、タコと言っても海に住んでいる”蛸”のことではありませんよ。

タコグラフは英語で「運転記録計(tachograph)」と言う意味で、日本では1962年に貸切バスなどで設置が義務付けられて以来、タクシーやトラックなどにも設置するよう年々設置義務の範囲が広がっています。

タコグラフの役割とは?

タコグラフは「グラフ(graph)」と言う名の通り、速度・エンジンの回転数・距離などの要素をグラフ化して記録する装置で、「速度超過はないか?」「連続運転時間は大丈夫か?」と言う管理面で使用される他、2016年1月15日に発生した軽井沢のスキーバス転落事故など交通事故が発生したときの状況を分析するツールとしても使用されます。

アナログタコグラフの見方を解説します

このチャート紙を例に解説すると、針が動き出しているのが22時過ぎから14時頃までですので勤務時間は22時から14時までと推測できます。

さらに細かく見ていくと、22時30頃から速度が90kmで一定していますので出発してすぐ高速道に入り、23時30分から30分程度休憩を取ったと分析することができます。

軽井沢の事故では「事故直前の速度が96kmだった」と言われていますが、これは沿道カメラの映像やバスに搭載されているタコグラフ(上の写真は事故と関係ありません)を分析した結果と言えるでしょう。このあたりは旅客機のフライトレコーダーに近いイメージかと思いますが、事故分析で使用されることのないよう普段から安全運行に対する備えや心がけが必要なのは言うまでもありません。

アナログ式とデジタル式

さて、タコグラフは大きく二つの記録方法があります。

一つ目は従来からあるアナログ式(上の写真)です。アナログ式は速度計の裏側に円形の感圧用紙「チャート紙(chart)」をセットします。チャート紙は時間とともに回転(24時間で1回転)していきます。そして、速度・距離・エンジンの回転数に連動した”針”が上下し感圧紙に記録していくことによりグラフを形成していきます。

もうひとつはデジタル式です。こちらは速度などの各要素をメモリーカードなどの電子媒体に記録していく仕組みで、乗務終了後にデータを抜き出して運行実績が記されたチャート紙を印刷します。

デジタコとアナログ式のチャート紙の解説

デジタル式のメリットは”その瞬間”の運行状況を記録し確認することができる点が挙げられます。また、「この交差点を通過したときの速度は時速43kmだった」などチャートに記録された情報とドラレコの映像をリンクすることも可能なため、ヒヤリハットや事故分析に役立てることができます。

この他、アナログ式では難しかった急加速・急減速・音声などといった情報も記録することが可能です。さらにこれらの情報を総合的に判断して「安全92点」「エコ84点」など運転に対する評価も出してくれるのですが、事業者によっては評価が悪い運転士を個別指導するところもあるため嫌悪感を感じている運転士も少なくありません。

個人的にはデジタコは非常に優れたシステムであり旅客輸送に必須だと思っていますが、「ハードがよくても運用する管理者によっては…」と言う感じでしょうか?

デジタコは義務なの?

現在、アナログ式・デジタル式(デジタコ)に限らずバスやタクシーなど旅客輸送に関わる車両はタコグラフ設置と保存が”おおむね”義務化されています。実は条件によっては設置義務を追わない旅客車両もありますので100%と言うわけではないようです。

一方、デジタコに関しては「夜間、実車距離が400kmを超えるワンマン運行の貸切バスや新高速乗合バス」などに設置することが義務化されていますが、デジタコのメリットや社会情勢から高速・貸切・路線に関わらず全車両に設置する事業者も増えてきました。

ただ、デジタコの本体価格だけでも20万円(別途、カメラ・分析ソフト・取り付け工賃などが必要)とも言われていますので、中小や零細のバス事業者には敷居が高い側面があるのも事実です。

しかし、運んでいるのが”人”であることを考えるとデジタコの導入は必須ではないかと思います。

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