29Apr
今年もいよいよ大型連休に突入しましたね。
余談ですが、世間では「ゴールデンウィーク」と呼ばれていますが、新聞やNHKなど”硬派”なメディアでは「大型連休」と呼んで区別しているのはご存知ですか?
もともと、ゴールデンウィークとはこの時期に公開される映画が多く、興行収入が見込めることから誕生した映画業界の言葉なので、ゴールデンウィークという言葉を使用すると宣伝になることから大型連休と置き換えられているそうです。
ちなみにこのブログは大型連休としていますが、これは大型連休のほうがキーボードが打ちやすいからだけです。
さて、そんな大型連休を前に京都から気になるニュースが飛び込んできましたね。
昨日のニュースによると、京都市交通局で運転士が突然意識を失い乗客がサイドブレーキをひいて停止させたという出来事があったそうです。
▼以下引用
京都市バスで今年3月、運転中に突然意識を失った男性運転手(33)の異変に気付いた乗客の男性がサイドブレーキをかけ停車させていたことが28日、分かった。乗客約10人にけがはなかったが、バスは交差点に差し掛かっており、事故につながる危険もあった。市交通局は「事故に至っていない」として公表していなかった。
市交通局によると、トラブルがあったのは3月19日午前9時10分ごろ。京都市上京区丹波屋町の千本中立売交差点で、赤信号から青信号に変わる際、立命館大学前発四条烏丸行きのバスの運転手がけいれんを起こして失神。バスはオートマチック車で、ブレーキから足が離れたため自動的に前進し、交差点を越え、約20メートル進んだという。
最前列に座っていた乗客の男性が異変に気付き、運転席左側にあるサイドブレーキをかけ、バスを停止させた。別の乗客の女性が救急車を呼び、運転手は市内の病院に搬送された。搬送時には意識を取り戻していたという。ブレーキをかけた男性は名前を告げず、立ち去った。
(出典:産経新聞 2015.4.28)
大事に至らなくてよかったのですが、正直、京都市交通局の対応をどう思いますか? 「事故に至っていない」との理由で公表していなかったそうですが、「救急車も呼んで運行に支障が出ている時点で事故でしょう」と思ってしまいます。
こういう重大インシデントが起きたにも関わらず放置しているとなると「組織ぐるみ」と思われてしまいますね。もっとも、現場の運転士ではなく幹部の問題なのでしょうが、これがきっかけでメディアや市民からの視線が厳しくなることを考えると、自分で自分の首を絞めた交通局幹部の責任は大きいように感じます。
運転士の健康管理は?
さて、組織の問題はさて置き、問題は運転士の健康管理です。
運転士に限らず一般の企業でも健康診断が義務化されているのですが、この結果によって乗務できなくなるという可能性は極めて低いのが実情です。
運輸系に関する健康診断としては鉄道では「医学適性検査」が、航空では「航空身体検査」が一般の健康診断とは別に実施されています。しかし、バス運転士に関しては定めがありません。実際、私も年二回の健康診断だけで済ませています。
そのため、「バス運転士も鉄道や航空並みの健康基準を導入すればいいのに」と思われるかもしれませんが、できないのが実情です。
理由は簡単「人手不足」だからです。
このブログでも再三書いているのですが、バス事業者のほとんどが人員不足の状態です。実際、平均年齢も、48.3歳(年収ラボ調べ)と、電車運転士40.0歳、パイロット44.5歳より高くなっています。当然、医学的なリスクは高いと言わざるを得ないのですが、中小企業ともなると1人乗務を外しただけで運行ダイヤが維持できないほどの厳しい状態です。
そして、1人外れたことによる他の運転士への負担も大きく、最悪「15時間に及ぶ長時間拘束」や「翌日までの休息時間が8時間しかない」など法令ギリギリの勤務が続くことになるため、診断結果で乗務から外されるケースが少ないのが実情です。
この状況に運転による緊張やストレスが加わりますので、高血圧など医学的リスクが高まることになります。
運転士が増えると思わぬ影響が!?
「じゃー、人が増えたら改善するの?」
今のバス業界では考えにくいのですが、仮に人が増えたら別の問題が生じます。
それが「給料」です。
バス運転士の給料体系は様々ですが、勤務時間が運転士ごとに異なる業界なので給料は自然と歩合制となります。仮に、運転士が増えたとなると勤務時間が減ることによって給料が減ることが想定されます。
本来、労働環境が改善されることなので喜ぶべきなのですが、実はバス運転士の給料は価格競争による人件費削減から低賃金を余儀なくされています。そのため、バス運転士の多くは残業や休日出勤などの手当てで生計を維持しているのです。
「低賃金を過重労働による手当で補う」これがバス業界の現状ですから、運転士不足が解消されていも収入減から退職する運転士が増えることも想定されるわけです。
つまり、低賃金→運転士不足→過重労働→働かないと収入が無い→健康の悪化→人が辞める→ …と悪循環に陥っているわけです。
究極の解決策は賃上げによる待遇改善か?
健康面も含めた改善策としては、結局のところ価格競争で削った人件費分をアップさせ、待遇を改善させることが有効ではないでしょうか?
もし、給料が改善すれば若手の新規採用が増え現役運転士は過重労働から解放されることが期待できます。さらに、賃金のベースアップによって低賃金を過重労働の手当で補う必要もなくなるため退職にも一定の歯止めがかかり、過重労働に起因する健康問題は改善されるように思います。
あとは、健康面で問題のある運転士は内勤に転属させるなど事業者内での運用が合致すれば健康問題は大きく改善するように感じますがいかがでしょう。
恐らく、このようなことが続くと健康診断の基準を厳しくすることや、緊急時に停車できるシステムを導入することなどが検討されると思いますが、健康問題の根本にあるのが「運転しているのが人間」という問題です。その運転士の健康面を悪化させているのが職場環境や業界を取り巻く環境にある可能性も忘れてはいけないような気がします。