29Mar
平成29年3月27日、格安旅行ツアーでおなじみの「てるみくらぶ」の破産のニュース。
正直、どのような事業にも格安を売りにする事業者があり、資金繰りが悪化して破産するケースはあるわけなので、ニュースを聞いたときは「へぇ、そうなんだ」と言う程度の反応だったのですが、「既に出国している人は自力で帰ってきてください」と言う趣旨の記者会見を見て家内と「なんだそれ」と首をひねらされました。
例え、破産とはいえ「責任を持って帰国の手配をしますので」と言うが”誠意”のような気もしますが、なんともお粗末な対応に今後はJTB・HIS・近畿日本ツーリスト・日本旅行など言った「大手」の旅行会社を通じての申し込みにシフトする人が多いかもしれませんね。
バス会社を評価する制度
さて、バス業界も関越道の事故や軽井沢の事故を契機に価格競争に一定の歯止めがかかり、利用者も名前も知らないようなバス事業者より名前を知っている大手バス会社にシフトする傾向がみられつつあります。
この傾向は「大手はしっかり運転士の教育して、運行管理もしっかりしている」と言う”信頼感”や”ブランド力”からなのでしょうが、運転している側としては「大手だから… 中小だから…」と言うものではなく、結局、事業者や運転士自身の安全に対する意識による部分が大きいような気がします。
ただ、こう言った意識は利用者からはわかりにくい部分がありますよね。
そこで、今回はバス事業者の安全意識についての評価制度「貸切バス事業者安全性評価認定制度」を紹介してみようと思います。
貸切バス事業者安全性評価認定制度とは?
貸切バス事業者安全性評価認定制度とは、日本バス協会がバス事業者からの申請に基づいて審査を行い、基準を満たせば「しっかり運転士の安全教育と運行管理をしている事業者ですよ」とバス協会が認定してくれる制度のことです。
貸切バス事業者安全性評価認定制度は、日本バス協会において、貸切バス事業者からの申請に基づき安全性や安全の確保に向けた取組状況について評価認定を行い、これを公表するもので、平成23年度から運用を開始しました。
これにより、利用者や旅行会社がより安全性の高い貸切バス事業者を選択しやすくするとともに、本制度の実施を通じ、貸切バス事業者の安全性の確保に向けた意識の向上や取り組みの促進を図り、より安全な貸切バスサービスの提供に寄与することを目的としています。
(公益社団法人日本バス協会)
余談ですが、この制度はその名の通り「貸切バス」がメインであるため、街中を走る路線バスに認定シールは貼ってありませんので探さないでくださいね。
さて、この認定制度はミシュランのように「☆(一つ星)」からはじまり、更新の都度実施される審査で優秀な成績を収めると「☆☆(二つ星)」「☆☆☆(三つ星)」とランクアップしていきます。
(公益社団法人日本バス協会)
ちなみに、私の地元愛知県は三つ星がジェイアール東海バス・名鉄バス・名阪近鉄バスと言った大手を含めた12事業者、二つ星が4事業者、三つ星が11事業者、計27事業者が認定を受けており、全国では1,017のバス事業者が認定(平成29年3月現在)を受けるなど年々広がりを見せています。
では、気になる審査について触れていきましょう。
さすがに一運転士の私が会社の奥の院(審査風景やそれらしき人)を見たことはありませんので聞いた話も含めての内容になりますが、大部分は点呼簿や乗務員台帳と言った法令で定める帳票類を確認し、適切に記録し運用されているのかを確認する作業が大きなウェイトを占めるようです。
確かに、軽井沢の事故では点呼や法令で定める健康診断が実施されていないかったことが指摘されていますから「決められたことを適切に行っているのか」と言うチェックは重要ですね。
他には、デジタコで運行記録を残しているか? ドラレコ映像を教育で使用しているか? 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を行っているか? と言った部分も審査対象になるそうです。
一方、この制度で一番大きい影響を与えるのが「事故」です。
あくまで安全を認定する制度ですから、事故による乗客の負傷の他、バスが第一原因とされる交通事故で相手を負傷させてしまうとその怪我の程度によっては認定が取り消されてしまうこともあります。
例えば、脊髄の損傷・内臓破裂・14日以上の入院を要する大きな怪我など自動車事故報告規則に関わる事故を起こしてしまうと認定は取り消され、一定の期間(欠格期間)は再認定を受けることができません。また、再認定されたとしても一つ星からやり直しとなりますので安全運転が運転士全員に求められます。
最後に、この制度が始まったのは平成23年度と比較的新しいのですが、制度が樹立した背景には”悲しい事故”があったのは言うまでもありません。こう言った制度がなくともバス事業者は安全に対する高い意識を持ち続けることが大切であると考えます。
しかし、4,000社以上あると言われる貸切バス事業者のうち、認定を受けている事業者が約1,000社しかないことや、バス協会に非加盟の事業者がある現実を考えると、まだまだ制度やバス業界そのものに改善の余地があるのかもしれません。