路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

貸切バスの『抜き打ちによる覆面調査』って何をやるの?

今日は貸切バスで動きがありましたのでこちらのニュースをピックアップしてみようと思います。

軽井沢のスキーバス転落事故を受けて、ドラレコの設置義務化や教育時間の見直しなどが行われていますが、今回新たに『現場における覆面調査』が行われることになりました。

国土交通省では、貸切バス事業者に対して、国の監査官が営業所における監査や街頭監査を実施しているところですが、更なる輸送の安全確保の状況を確認するため、民間の調査員が一般の利用者を装い、実際に運行する貸切バスに乗り込み、現場でしかわからない適切な休憩時間の確保などの法令遵守状況について調査します。(国土交通省)

とある路線バス会社では「アナウンスをしっかりやっているのか?」「左折時一旦停止など社内ルールを遵守しているのか?」など、利用者に扮した一般調査員や営業所の管理者がチェックすると言うことを聞いたことがありますが、その行政バージョンですね。

もちろん、行政がチェックする部分は前述のような社内ルールに関するものではなく、法令で定められている運行に関する部分です。

路線バスで言うと『運転士名の表示』『運行表(運転士用の時刻表)の携行』『運行中の室内灯点灯』などが法令で義務づけられていますので、そのような法令に関する部分がチェック項目になるのでしょう。

恐らく、国交省の文面を読み解くと、今回は「連続運転時間」「休憩時間」などが重要なチェック項目になってくると思います。

つまり、「運行中、法令で定められた休憩を取っているか?」「運行距離などに対して交替運転士(ツーマンなど)を手配しているのか?」と言う感じです。

例えば、ワンマンの貸切バスを例に説明しましょう。

まず、運転士は連続運転4時間ごとに30分の休憩を確保することが義務づけられています。

つまり、7:00に出発した場合、11:00の段階で30分の休憩を取らなくてはいけないわけです。

ただ、「分割して休憩を取ることができる」「高速道路を走行する場合の連続運転はおおむね2時間」など行程によって休憩のルールが多少異なりますので、このあたりを覆面調査員が実際に乗車して判断すると思います。

この他、昼間ワンマン運行の一運行の実車距離は原則500km(夜間ワンマンは400km)を超えてはいけないと言うルールもあります。

例えば、『名古屋~東京』の場合、片道約350kmですので、昼間の片道運行だけであれば運転士一人で乗務することができますが、日帰りツアーとなると往復で700kmを超えますので、同じ運転士が復路も運転すると違反になります。

さらに長距離となると「拘束時間」の問題も生じますので、長距離ツアーの場合は、途中で運転士を交替させるかツーマン運転にするなど、予め手配をしておかなくてはなりません。

以前、『拘束時間に含まれない「中休勤務」 休憩中も心身は解放されず過重労働の温床に!?』の記事でも書いたのですが、バスの運行については様々な基準(さらに各事業者の労使協定など)がありますので、国家資格である『運行管理者』が勤務割りを作成し休憩等を管理することとなっています。

今回のニュースは貸切バスの覆面調査ですので「路線バスはどうなの?」と思われるかもしれません。

もちろん、路線バスも貸切バスと同じように連続運転時間・休憩・休息期間・拘束時間などが定められています。

ただ、路線バスはこれらの基準を元にダイヤや運転士の運用を立案し、毎日決められた行程(「行路」「仕業」などと呼びます)に乗務していますので、日によって異なるツアー(貸切バス)と比較すれば違反になる可能性は低いと言えます。

(そのかわり、通行止めや自然災害などでダイヤが乱れると点呼場は戦場と化しますが…)

本来、抜き打ち検査がなくてもしっかりとした運行管理を行わなければいけないのですが、関越道や軽井沢などの事故があると、より確実な運行体勢に向けて行政が動くのもうなずけます。

ただ、個人的には『規制緩和によるバス事業者乱立(特にいい加減な事業者の参入)や、価格競争による労働環境の悪化と安全が二の次にされる体質を招いた国の責任』『規制が強化されても法令ギリギリまで走らないと、まともな給料にならない』こう言った現実も忘れてはいけないと思いますが如何でしょう。

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