路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

「アルコール検知器の替え玉事件」バス運転士の飲酒事情は?

9月に入り朝夕は急に涼しくなった愛知県です。

さて、「秋は食欲の秋…」なんて言いますが『お酒の欲』は抑えきれなかったみたいですね。

週明けの記事で『泊りがけ乗務先で飲酒繰り返す』との見出しがあったのですが、読んでみたら私の地元愛知県の事業者でビックリでした。

既にご存知の方も多いかもしれませんが、ニュースはこちらです。

名古屋鉄道の子会社、名鉄観光バス(名古屋市熱田区)は4日、貸し切りバスを泊まりがけで運転する出張の際に、内規に違反する宿泊先での飲酒が繰り返されていたと発表した。内部調査に運転手27人が違反を認め、同社は今後処分を検討する。

 同社によると、8月に愛知、岐阜県の学習塾の生徒約4千人を合宿地の長野県山ノ内町の志賀高原まで約100台のバスで運んだ。復路の乗務前に携帯検知器でアルコール検査をする際、男性運転手(49)が同僚(48)に呼気を吹き込ませたことから、別の同僚らが上司に報告。聞き取りの結果、運転手計10人が宿泊先でビールを飲んでいた。全社的な調査でさらに17人が違反を認めた。
(中日新聞)

とまぁ、まじめに運転してる側から言わせると怒れる話しなのですが、さすがに週明けは点呼場でも談話室でもこの話題でもちきりでした。

その重大性について語る運転士が多い中、「先輩から言われて断り切れなかった運転士もいるんじゃないかなぁ」と分析していた人もいましたが、バスに限らず飲酒運転に関するニュースがなくなりません。

と言うわけで、今日はバス運転士の飲酒事情について少し書いてみたいと思います。

ただ、仕事柄デリケートな問題ですので、あくまで個人意見としてご覧ください。

運転士は微量のアルコールでも運転不可

まず、飲酒運転と聞くと「血液中のアルコール濃度0.3mg/mℓ又は呼気中のアルコール濃度 0.15mg/ℓ以上」と言う道交法の規定がパッと思い浮かびます。

正直、この基準を聞くと「呼気中のアルコール濃度 0.15mg/ℓ以下なら運転していいの?」と言う疑問を持たれる方も多いと思いますが、バス運転士は『旅客自動車運送事業運輸規則』と言われる省令によって

《酒気を帯びた状態にある乗務員の乗務禁止》

道路交通法施行令第44条の3に規定する血液中のアルコール濃度0.3mg/mℓ又は呼気中のアルコール濃度0.15mg/ℓ以上であるか否かを問わないものである。

と、定められています。

要するに、「0じゃないとダメ!」と言うわけです。

そのため、営業所にあるアルコール検知器は0.001でも反応すれば違反と警告されるようになっています。

ただ、機種によっては”うがい薬”でも反応するため、アルコール検知器が警告音を発したと同時に「飲んだだろう!」と犯人扱いされるのは勘弁して欲しいと思うときがあるのですが、このご時世「そこまで考えてからアルコール検知器に息を吹き込め!」と言うが私の営業所の考えです。

「仕事柄当然!」と思われている方も多いかもしれませんね。

飲酒に関する社内規則は?

勤務前の飲酒基準については事業者によって異なります。

「勤務前日は飲酒不可」と言う事業者もあれば、「勤務○時間前から飲酒不可」としている事業者もあります。さらに、「個人裁量に任せる」事業者もありますので、社内ルールに関しては一概には言えません。

ただ、今回のような宿泊勤務に関しては「飲酒不可」としている事業者が圧倒的ですが、結局、アルコール検知器に息を吹き込むとき以外は目が行き届かない場所ですので、何とも言えないのが現実です。

かと言って、休息期間中も事業者が運転士監視するとなると別の問題が生じますので、最終的には「ルールを守る」「プロの運転士として意識する」と言う個人の倫理に一任されるのが実際のところだと思っています。

アルコール検知器が反応したら即解雇?

さて、このブログをご覧の方の中にはこれから運転士を目指す方も多いと思いますが、一番気になるのがココですよね。

実際のところは事業者ごとにアルコール検知器が違反を示したときのペナルティーは異なるのですが、結果(呼気中のアルコール濃度)によって即解雇されるのは”アリ”です。

そのため、「アルコール検査に引っかかり退職した運転士が同業他社に転職した」と言う話しも”多く”聞きます。(「少なからず」と言えない現実)

本来、「このような運転士は採用してはいけないのでは?」と言うのが世論なのでしょうが、そうは言っても運転士不足は深刻なので、苦い経歴があっても運転士経験者は未経験者に比べ重宝される(採用される)現実があるのも事実です。

ハインリッヒの法則!?

今回の件は「社内ルールに反して宿泊地で飲酒した」「同僚に頼んで息を検知器に吹き込ませ異常のないデータを送信した」「アルコールが検出される状態で運転した」と、大きく三つのポイントに問題点が分類できるかと思いますが、個人的にはここに『ハインリッヒの法則』があると確信しています。

ハインリッヒの法則とは、「一件の大きな事故・災害の裏には、29件の軽微な事故・災害、そして300件のヒヤリ・ハットがある」と言う危険予知の考え方です。

「社内ルールに反して宿泊地で飲酒した」と言う細かな違反が、「同僚に頼んで息を検知器に吹き込ませる」と言う異常事態を招き、最終的に「アルコールが検出される状態で運転した(飲酒運転)」と言う重大な違反を犯した。

ハインリッヒの法則は危険予知の考え方なので、今回の件とミックスすのはナンセンスかもしれませんが、少なくても「細かなミスやルール違反は放置してはいけない」とも言える事例のような気がします。

あと、今回のニュースは「不名誉」かつ「いけないこと」であることに違いは無いのですが、自己の正義感・倫理観から上司に報告した運転士は個人的に賞賛したいと思います。

極端な例ですが、イジメなど、人は悪いことが行われていても大人数ともなると仲間の目線や報復などを恐れ、「悪い」と分かっていても周囲に同調してしまうのが心理ではないでしょうか?

そのような中、上司に報告した同僚は、経緯や結果は別にして個人的には「よく報告した!」と言ってもいいと思います。

最後に「自分のハンドルは何十人もの生命が預かっている」と言うバス運転士としての意識を再認識させられた今回の件、バスに限らず飲酒運転は撲滅したいものです。

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