17Sep
近鉄バスで『運賃箱から着服、運転手2人解雇』なんてニュースが出ていましたが、先月は南海バスでも同じような事件がありましたので、休憩室ではこの話題で持ちきりでした。
まず、ニュースを紹介すると…
路線バスを運行中、運賃箱の投入口から硬貨を抜き取り計約240万円を着服したとして、近鉄バス(東大阪市)が男性運転手2人を懲戒解雇したことが分かった。
運転士2人は乗客が現金を払う際、投入口から硬貨が下に落ちないように運賃箱を操作していた。操作履歴を基にドライブレコーダーの映像で確認した。
(一部抜粋、毎日新聞)
ちなみに、このニュースを見て「どうやって着服したの?」と思われる方も多いと思いますので、今日は運賃箱の取り扱いについて色々書いていこうと思います。
一応、前置きしておきますが、運賃箱の機種や取り扱い方法は事業者によって異なることをご理解ください。
金庫の中身は運転士では扱えない
一番肝心な部分がココになります。
基本的に運賃箱にお金や整理券を入れるとベルトを通って金庫に落ちる(一部は両替用に運賃箱内にストックされる)仕組みになっているのですが、運賃箱の内部(ベルトや金庫)に落ちたお金や整理券は運転士が取り出すことは一切できません。
まず、車庫に帰ると運転士は終業業務の一環で金庫を取り外しますが、金庫は蓋が閉められてからでないと運賃箱から取り外せない仕組みになっています。
そして、蓋が閉められた金庫を持って点呼場にある専用の精算機(写真)に向かい金庫を挿入します。
挿入すると、蓋が開いて中身のお金や整理券がジャラジャラと下に落ちる(排出される)ようになっているのですが、排出が終わり蓋が閉められるまでは取り外しができませんので、金庫内のお金を運転士が扱うことはできません。
…と言うか破壊しない限り不可能です。
▲金庫を精算機に挿入する様子
(引用:京都市交通局)
余談ですが、運賃箱から金庫を取り外したとき、手に持った金庫の重みで「今日はたくさん小銭が入っているなぁ」「全然お金入っていないじゃん」と、一日の乗客数を振り返ることもしばしば…
つまり、犯行は「お金が投入口から運賃箱の内部に入る前」と言うことになります。
気になる手法は?
さて、今回のニュースでは具体的な手法が掲載されていました。
タッチパネルで運賃箱を操作し、硬貨が投入口に入らないようにする共通の手口を使っていた。投入口は透明の箱状で、中央がくぼんで底に穴があいている。運転手らは、硬貨が落ちないよう穴をゴム状の板でふさぐ操作をし、乗客の降車後に、たまった硬貨をつかんで袋などに入れていたという。
(引用:朝日新聞)
どのような意味か掘り下げてみます。
まず、運賃箱は基本的にドアが開いているときにしか動作しませんので、それ以外の時(運行中)は「投入口とベルトの間に仕切りが入り、お金が落ちないようになっています。
▲ドアが閉まっているときは、矢印部分に仕切りが入り、お金が運賃箱内部に落ちないようになっている。
しかし、ボタン操作をすればドアが開いているときでも仕切りを出すことは可能です。
つまり「バス停で乗客が降りるときにボタン操作で仕切りを出してここにお金をためていた。降車後、ここにたまったお金を着服した」と言うわけです。
同業としては「よく、こんな方法に気が付いたなぁ」と悪い意味で関心するのですが、同時に「整理券をどのバス停で何枚取ったか」「運賃箱の処理履歴(何人目はいくら入れたのか)」などのデータはしっかり記録されていますし、ドラレコで撮影されているのが当たり前のご時世です。
あとから確認すればすぐにバレることを考えると、あまりに短絡的な犯行と言わざるを得ないでしょう。
最後に、このようなニュースが出ると乗客の視線がさらに厳しくなると同時に、疑いの目で見られることにもつながりますので、真面目に勤務している運転士から言わせるといい迷惑です。
あと、私もどのボタンを押せば仕切りが出るかは知っています。
同じように仕組みを理解されている同業の方は多いと思いますが、決して悪用はしないでくださいね。(って、当たり前のことで恐縮ですが…)