路線バス運転士になった元ウェディングプランナーの乗務日誌

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路線バス運転士こーくんのブログ

路線バスの運行を支えるシステム5選

路線バスと聞くと「アナログ」とか「ローカル」のイメージが強いのですが、実は結構「ハイテク機器」で支えられている部分もあります。

そこで今回は路線バスの運行を支えるシステムの一端を紹介しようと思います!

方向幕や車内放送はワンタッチ

路線バスを始発停に着ける際、運転士は方向幕と車内放送を今から運行する系統に設定します。

一昔前までは方向幕を設定してから該当する系統の案内放送用カセットテープ(8トラ)をセットするなど独立した工程だったのですが、最近は定められたコードを設定器に入力することで、方向幕・車内の自動放送・運賃表示器などのすべてがその系統に設定されます。


▲系統設定器

ちなみに、系統と一口に言っても同じ路線で経由地や始発停が異なるケースもあるので、設定器用のコードも「○○経由は7011」「△△経由は7021」と言う具合で振り分けられています。

余談ですが、この番号を間違えると方向幕の誤掲出や、「あれっ、通らないはずのバス停の案内放送が流れちゃった」というトラブルになりますので、複数の系統が存在する路線に乗務するときはちょっと気いますね。

【関連記事】方向幕の設定機で好きなコードは「回送」

おつりも自動で計算してくれる運賃箱

運転士はすべてのお客様から運賃を収受するわけですが、スーパーのレジのように一人一人お金を扱っていてはバスは遅れていく一方です。

そこで、路線バスには運賃精算を容易にするために『運賃箱』が装備してあります。


▲両替機能付き運賃箱

この運賃箱は種類が豊富で、単にお金を入れるだけの箱タイプのものから、両替機能が付いた運賃箱まで幅広く活躍しています。

もっとも、最近のスタンダードは両替機能が付いた運賃箱がほとんどで、あとは、事業者によってバスカードの読み取り機やICカードの読み取り機が付加されているような感じです。

さて、両替機能が付いた運賃箱の場合「あらかじめ両替をして、ちょうどの金額を運賃箱に入れる」のが通常の精算方法となるのですが、事業者の中には『運賃と投入金を照合しておつりを自動で排出する』機能を持ち合わせた運賃箱を装備しているところもあります。

愛知県の大手バス事業者の場合、あらかじめ両替をしてちょうどの金額を運賃箱に入れる方法を採用しているのが『名鉄バス』で、おつりを自動で排出する方法を採用しているのが『名古屋市交通局(市バス)』ですね。

おつりが出るタイプのイメージとしては、乗車時に210円払う市バスの場合、運賃箱に500円玉を入れると自動で290円排出されると言う感じです。もし、これが後乗り(降車時に精算)の整理券方式のときは、整理券に印刷されたバーコードを読み取り投入金と照合し自動でおつりを排出する感じです。

このように、ハイテク化され遅延防止に貢献する一方、支払い方法が事業者や路線によってバラバラなので「支払方法がわからない」と困惑している利用者がいるのも現状です。

【関連記事】運賃箱にいれるべき硬貨を両替機に誤って投入してしまう乗客の話

誤出発防止のインターロック

バス運転士の作業で一番多いのがドア開閉です。

しかし、ドアを直接目視して安全を確認する電車の車掌さんとは異なり、バスの運転士はミラー越しに後部ドアの安全を確認しなければいけませんので、ドアには人挟みを防止するセンサーが設置されています。

また、ドアを閉めずに出発することのないように、ドアが開いているときはアクセル(動力)がカットされる「インターロック」と呼ばれるシステムを搭載しなければならないことが保安基準で定められています。

実際、運転席横で運賃精算や旅客案内などをしていると、つい開けた後ドアのことを忘れることもありますので、かなり大切な装置と言えるでしょう。

恐らく、出発しようとアクセルを踏み込もうとしたらロックがかかっており「あっ!?」と閉め忘れに気が付いたことのある運転士も多々いると思いますよ。私もその中の一人ですが…(反省)

【関連記事】「新ワンマンバス構造要件」で定められたバスの扉を開閉するためのシステムが運転士に不評な話

バスならではのカーナビシステム

さて、実際にバスを運転していると「あれっ、この交差点は確か左折だったよな??」など進路をについて悩むことがまれにあります。

特に「この系統はこの交差点を左折、あの系統はこの交差点を右折」などのように同じ交差点を複数の系統が通る場合はこのような混乱が予想されます。

まぁ、中にはボーとしていて気が付いたら曲がる交差点を直進していたと言うケースもあるのですが、このような経路ミスを防止するためにバス用のナビゲーションシステムを搭載している事業者もあります。

愛知県だと名古屋市交通局(市バス)に導入されていますね。

このシステムは車のカーナビと同じようなイメージで、主要な交差点に差し掛かると進路がディスプレイに表示され、運転士はこれを確認することによって経路ミスを防止するわけです。

さらにこのシステムは運行時刻と連動しており、始発時刻の勘違い(寝坊)や、定められた時間前にバス停を通過する「早発」防止にも貢献しています。

ただ、このシステムはあくまでオプションなので、厳しい経営環境が続くバス業界で導入しているのはごくわずか(ほとんど大手)と言う現状です。

バスロケーション

現在、路線バスの多くはGPSによって走行場所をリアルタイムで監視しています。

システムは様々ですが、運行を統括する営業所のパソコンの地図上に印と車両番号が表示されるタイプが主流で、車両故障などで回送中の車両を応援に向かわせる場合などに一役買っています。

一方、このシステムを乗客向けに提供しているのがバスの位置情報を提供するサービス(通称、バスロケ)で、例えばバス停に「前のバス停を出発しました」、スマホに「10分遅れで運行しています」などと、接近情報を提供することで遅延によるイライラを軽減してくれています。


▲乗客向けのバスロケシステム

民間のバス事業者や都市圏の公営バスの多くがバスロケを採用しており徐々に普及していますが、地方のコミュニティバスは自治体によって財政状況が異なりますので運行頻度の多いコミュニティバスにも関わらずバスロケが無いなど温度差あるのが現状です。

ただ、定時運行が確約されていない路線バスの環境を考えると、乗客をフォロー(利便性を確保)するシステム導入は必須のような気がしますね。

まとめ

このように、路線バスの運行は運転士を支援するシステムと、乗客の利便性を高めるためのシステムによって支えられています。

しかし、これらはあくまで運行を支援するためのものですから輸送の要となる『安全』に対する意識や、それに付随する「健康管理」「勤務時間の管理」「教育」などと言った事項は事業者や運転士個人に委ねられているのが現状です。

つまり、システムが整備されていても「法定の勤務時間が守られていない」「必要な教育を受けていない」などということがあれば安全輸送は崩れてしまいますので、システムも去ることながらソフトも大切であることは言うまでもありません。

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