20Jan
たまに『車内点検を怠って、車内に乗客が閉じ込められる』と言うニュースがあります。
昨日(2018.1.19)も横浜市でこのようなミスがあったそうなのですが、車内点検事情はどうなっているのか疑問を感じる方も多いはずなので、今日は車内点検事情について書いてみましょう。
多くの事業者では車内点検がルール化されている
まず、終点到着後の車内点検については、多くの事業者で実施することが社内ルールなどで決められています。実際、私の営業所でも車内点検を行うことが決められています。
ただ、「100%確実に実施されているかどうか?」と聞かれれば微妙なところがあります。
大きな要因は『手間』と『後続車』です。
まぁ、手間はその名の通り「帽子を取って、シートベルトを外して見に行くのが面倒くさい」と言うもなので、この手のニュースでは論外なのですが、切実な部分としては後続車の問題があります。
例えば、片側一車線の道路にあるバス停だと、やはり後続車が気になるのが正直なところです。昼なら交通量も少なく追い越しもスムーズなのですが、交通量が多い時間帯だとバスが止まっているだけで、渋滞に拍車を掛けてしまいますので「早く出発したい」と思ってしまいます。
正直、「バスだから仕方ないじゃん!」と割り切ることも大切なのですが、小心者(?)の私は後続車が気になります。
後続車がバスの場合は心理的に焦ります
そして、最大のプレッシャーを感じるのが後続車がバスの場合です。
私のバスが降車扱いをしているため、後ろで待たされているバスが降車扱いできない。逆に、前のバスが降車扱いをしているので、私のバスが着車できず乗客からのプレッシャーを背中で感じる。
駅前のロータリーでよくあるシチュエーションです。
お互い運転士ですので「早く出発したい」「早く着けたい」と言う気持ちがすごく理解できるので、どうしても降車したら運転席から車内を振り返るだけで出発させることも多々あります。
余談ですが、中には後ろで待たされているバスの運転士がブレーキペダルを踏んだり離したりして「プシュー、プシュー」と空気圧でプレッシャーを掛けてくる人もいるんですね。
まぁ、これで焦ると寝過ごした乗客を見落とし、回送中に乗客が運転席に駆け寄って・・・ となるので、このような輩のときはワザとゆっくり確実に車内点検をしていますが・・・(笑)
冗談はさておき、つい数日前も危うく見落としそうになることがありました。
とあるロータリーで後ろにバスが団子になっている状態です。
終点で乗客を降ろし、目視だけで出発することも考えたのですが「副班長」というポジション柄、石橋を叩いて渡ることを優先させた私はササッとシートベルトを外し車内へダッシュ! すると、後ろの席で寝ている乗客を発見!!!
「おぉぉぉ、いるじゃん!!」(←心の声)
すぐに声を掛けて降車してもらったのですが、ミラーで確認しても、振り返っても見えませんでしたら「点検して良かった!」と感じましたね。ちなみにイヤホンを着けて音楽を聴いていましたから全く気が付かなかったのでしょう。
車庫で寝過ごした乗客を見落とすリスクは?
さて、そのまま車庫に回送して乗客が閉じ込められるリスクが高いかどうかと言われれば、私の営業所での可能性は低いほうです。
このあたりも事業者によって状況が異なるのですが、私の営業所では乗務終了後に整理券の発券機に蓄積された廃券の処分と、車内清掃が義務づけられています。つまり、乗客を乗せたまま車庫に回送しても、車庫内で車内に行く行程が含まれていますので、最悪ここで発見できるわけです。(ただ、掃除や廃券の処理をしない横着な運転士だと話しは変わりますが・・・)
あと大手事業者などで考えられるのは、車内清掃や廃券処分などの業務を外注に出している場合です。このケースだと「運転士は車庫に戻ったら金庫を抜いて終わり!」と言う感じですから、ルールで決められていても車庫での点検を怠ると閉じ込めのリスクは高くなります。
色々書きましたが、『点検するルールを怠ったために閉じ込めてしまった』と言うのが真因なので、このようなニュースが報道されると何を言っても弁解にしかならないわけですが、「後続車が気になって車内点検を目視だけで終えてしまう」と言う心理的な事情もゼロではありません。
余談ですが、車庫に戻り運転士がバスのドアを車外のスイッチで閉めると車内のスイッチは無効化されるので、車内からドアを開ける場合は「非常コック」を取り扱わないと無理です。(たまに、運転士でもこのことを知らない方がいるので参考までに・・・)
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