1Sep
今日は運転士の必須アイテム「運行表」について解説していきましょう。
路線バスも鉄道と同じように「ダイヤ」に基づいて運転されていますよね。当然、運転士もそのダイヤに沿って運転していくわけなのですが、運転士が使用する専用の時刻表は市販や車内で配布されている時刻表とは少し異なります。
みなさんがよく見かける時刻表は「バス停名」と「時刻」くらいしか記載されていないと思うのですが、運転士が使う時刻表にはそれらの情報に加え「出庫時刻」「他路線との接続時刻」「整理券番号」「給油」など業務上の情報も色々明記されています。
(ちなみにこの時刻表のことを「スタフ」「スターフ」「ダイヤ板」などと呼ぶのですが、ここでは「運行表」として説明していきます。)
さて、運転士が使用する運行表ですが、実は「旅客自動車運送事業運輸規則(道路運送法の下に定められた規則)」によって携行が義務付けられているアイテムだったのはご存知でしたか?
路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者は、主な停留所の名称、当該停留所の発車時刻及び到着時刻その他運行に必要な事項を記載した運行表を作成し、かつ、これを事業用自動車の運転者に携行させなければならない。(旅客自動車運送事業運輸規則より抜粋)
もちろん、運行表がなければ自分が運転する便がわかりませんから、「規則で決められているから持っている」と言うよりは「無ければ運転できない」と言うのが実際のところですね。
そのため、運行表は車のキー同様に無くてはならないアイテムと言う位置づけです。
では、その運行表について解説していきましょう。
事業者によって異なるデザイン
先程、「運転士は運行表を携行しなくてはいけない」と説明しましたが、そのデザインまでは定められていません。そのため、事業者ごとに異なるデザインの運行表が用いられています。ただ、各社異なるとは言っても「仕業表(行路表)型」と「時刻表型」の二つのデザインに分類することができます。
(説明用に作ったものですので「そんな系統ないぞ!」など、細かなツッコミは抜きにしてくださいね。)
(1)仕業表型(行路表型)
こちらは1日のスケジュール(仕業・行路)が1枚の用紙にまとめられたもので、出庫時刻・出発時刻・通過時刻などが簡潔にまとめられています。
ご覧のように1日のスケジュールが把握しやすいのですが、その反面、バス停ごとの時刻を把握するには別紙を見なければいけないため早発の危険が伴います。
そのため、ダイヤ(所用時分)がパターン化されている路線やシャトルバスなどに向いていると言えるでしょう。
(2)時刻表型
こちらは市販・配布されている時刻表で見かけるデザインとほぼ同じです。
バス停ごとの時刻を把握することができますから、時間帯によってバス停間の所用時分が異なっても確認することが容易で早発防止にもなります。また、1便に対する情報量も多く記載できますので、乗り換えや接続などの情報も書き加えることが可能です。
↑1枚に1便印刷されている例(出典:バスいこブログ)
一方、短い区間をひたすら往復するような路線だと折り返すたびに運行表をめくる必要が生じますので「面倒くさー」と思う運転士もいるかもしれません。
そんな運転士を思ってか(?)事業者の中には市販されている時刻表と同じように他に乗務する便もまとめて印字するところもあります。
↑往路と復路がまとめて印字されている例(出典:バスいこブログ)
写真では乗り換え案内や給油確認などの情報も明記されていますね。
また、他の運転士が気を利かせた「落書き(禁止している事業者もあります)」と呼ばれるメモが記された行路表も存在しますので、運行表のバリエーションは豊富と言えます。
(落書きについては「時刻表に落書き!? いえ、運転士への伝達事項のことです」の記事をご覧ください)
行路表の厚みでテンションが決まる?
このように運行表と一口に言ってもそのデザインはさまざまなのですが、時間帯による道路事情を考慮してダイヤ設定(余裕ダイヤ)をする事業者も広まっていることもあり、全般的に時刻表タイプが普及しているような感覚です。
(実際、説明用で作成した仕業表型は名古屋市交通局をイメージしましたが、現在は時刻表型に変更されています。)
とまぁ、運行表について解説してきましたが、通し勤務ともなれば便数も多くなり運行表は厚みが増しますよね。
正直なところ、朝出勤して分厚い運行表を手に取ると「今日も長いなぁー」と、ため息交じりにスタートするのが本音です(苦笑)
(※2016.4.21 用語を一部修正しました)